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2023.02.25【 ORDER SHOES When 】解体白書 3/3
最終回となる、第3回目は “底付け” と呼ばれる工程から仕上がりまでと、それに付随する細かな仕様・工程についてお届けします。第一回目
・ 第二回目 の記事も、より分かりやすいように加筆・修正を加えておりますので、ぜひ振り返ってお読み頂ければ幸いです。
【 第三回 】すくい縫い後から、仕上がりまでの工程について
前回までの工程で、履いた際に足が触れる部分がおおかた完成となりました。ここからは地面に接する部分の製作工程の(底付け)説明になります。
底付け工程では、「グットイヤーウェルテッド製法(機械製靴)」と「ハンドソーンウェルテッド製法(手製靴)」それぞれに発生する作業に大きな違いはなく、その作業を行う手段が違うと言えます。
大量生産を基本とする機械製靴は、各工程を細分化し分担作業で製造していきます。一人の職人が担当する領域を絞ることで、作業効率を向上させ品質のブレが出ないよう努めていきます。
一方、手製靴は分担制にしたとしても、一人の職人が担当する領域が広く、2〜3人で少数生産を基本とします。機械では出せない職人の手癖や拘りを全面に出し、仕上がりのバラつきを “アジがある” や “雰囲気がいい” と評価し、クラフツマンシップ溢れる製品に昇華させていきます。
今回もマニアックな内容になりますが、各工程の製作背景をお楽しみ下さい。
【 工程その④ 本底加工 】
ウエルトが縫い付けられた中底革(履いた際の接地面)に本底を縫い止める準備をします。
中底と本底(地面に接地する底材)の隙間に埋める役割と、クッション材の役割も担う詰め物(一般的にはコルク)を貼ったり、塗ったり、充填し、更に靴底の変形防止・歩行を助長する目的でシャンク(一般的には鉄製)を入れ、本底とウエルトを接着します。
グットイヤーウェルテッド製法やハンドソーンウェルテッド製法で作られた靴が履くほどに足に馴染むのは、履きこむ事で中底や詰め物が使用者の足型状に潰れていき、足型のインソールが出来上がっていくからです。
仕様によっては、ダシ縫いの糸を見えないようにするヒドゥンチャンネルの準備や、フィルドバック(本底、土踏まず部分が山のようにそりたった仕様)べヴェルドウエスト(靴のウエスト部を絞り込む仕様)などの下準備を行います。
【 工程その⑤ ダシ縫い 】
工程④で接着された本底とウエルトを糸で縫い止める工程。すくい縫い同様にチャン(松脂と油を煮詰めた物)を染み込ませた糸で縫います。
機械で縫うと片足が数秒で終わる作業ですが、これを手縫いで行うと片足1時間ほどかかります。
機械縫いはピッチ(縫い目の幅)の細かさに限界がありますが、スピードとピッチの正確さに優れ、多種多様な素材を縫う事が出来ます。
一方手縫いは、機械よりピッチを細かく縫う事が可能ですが、工数(時間)の増加と縫う素材を選びます。(一般的にゴム底は手縫いに不向きです)
履き心地や見た目においても手縫い、機械縫いに、大きな差が発生しないため、手製靴でも九分仕立てとし、この工程を機械を用いて、工数(時間)の圧縮をする事が多くあります。
【 工程その⑥ ヒール(積み上げ・カカト)の作成 】
本底が縫いつけられたら、次はヒール(積み上げ・カカト)の作成になります。
使われる素材はプラスチック製の物から木製・革製・金属製と様々ありますが、グットイヤー製法・ハンドソーン製法の二つであれば革製が主に使われます。
ヒールは、靴により様々な大きさ・形がありますが履き心地、見た目共に影響が出やすい部分になります。
ヒールが大きくなれば安定性が増し、歩きやすくなりますが、見た目がカジュアルになりがちです。
片や、形状のデザイン性が強いと安定に欠けたり、修理の際に再現が難しく、結果全交換なんてことも、、、
特に、高さにおいては木型設計の段階から決められており極端な変更は靴に大きなダメージを与え、ひどい場合には履いている人の足へも悪影響を与えてしまいます。
【工程その⑦ コテ入れと仕上げ】
工程⑥ 以降は、見た目を良くしていく仕上げの工程になります。
本底への着色やコバやヒールへの焼きゴテ入れ、アッパーへの着色など仕様によって様々な作業があります。
工程や道具は各メーカー、職人ごとに異なり、ブランドの特徴や付加価値に直結する事が多いので、企業秘密になっていることが多々あります。
代表的なものに、アッパーの染色(パティーヌなど)は各社が様々な染料や顔料を独自に配合し、独特の雰囲気を出せるよう創意工夫をしています。
Whenでは、過剰な装飾用のコテ入れはせず、コバゴテ・ヒール部の飾り車 を基本とし、デザインによって追加も承っております。
全3回に渡ってお届けしました【 ORDER SHOES When 】解体白書ですが、お楽しみ頂けましたでしょうか?
個人的には、『 見た目は素材に左右され、履き心地は木型に依存し、歩きやすさは製法が関係する 』と考えております。
理想の一足を見つけるには『 生産背景を知り、製法の得手不得手を理解し、数多く履いてみる 』ことが必要なのかもしれません。
こういった観点で、When は私たちが思い描く理想の靴を体現するメーカーと言えます。
ぜひご来店の際は、足入れ頂きフィッティングをお楽しみ頂ければ幸いです。
Writing : SECOND HOUSE 注文靴担当 竜田