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2023.02.07【 ORDER SHOES When 】解体白書 2/3
第2回目は『 ORDER SHOES When 』こだわりのハンドソーンウェルテッド製法 九分仕立てについてご紹介致します。
前回に引き続き、SECOND HOUSE にて、注文靴担当の竜田がお届け致します。
当店ホームページのスタッフ紹介( ABOUT US )にてキャリアを掲載しておりますが、長年靴作りに携わってきた知見を活かし、When の特徴を解説して参ります。
ハンドソーンウェルテッド製法 九分仕立て とは
何の製法においても、アッパー(甲革)を木型に吊り込み、靴となるカタチを覚えさせることから靴作りは始まります。
この吊り込みの際に、① 木型の下に中底(履いた際の接地面)をセッティングして、② アッパーを引っ張り釘打ちつける “吊り込み” を行います。
ちなみに「本底」とは地面に接着する部材を指す言葉なので、中底はその上の層(履いた際の接地面)を指す言葉になります。
ここから先において、靴作りで有名な「グットイヤーウェルテッド製法(機械製靴)」と「ハンドソーンウェルテッド製法(手製靴)」の分岐点が訪れます。私自身も両方の製法を経験しておりますが、優劣という観点は持ち合わせておりません。
当たり前ですが、両方にメリットがあります。
これをお伝えすることが本記事における、最終的な目的なのかもしれません。
当然ながら工数(手数)の増減は、コストの増減でもある訳ですので、このあたり含めプロダクトって面白い!と私は感じております。
【 工程その① 中底加工 】
ハンドソーンウェルテッド製法の特徴の1つが中底革の加工です。
中底に使用する革を木型に合わせて切り出し、水で濡らした中底革を自転車のタイヤチューブ等で、木型に巻きつけそのまま乾燥させることで、木型底面の凹凸(カーブ・立体感)を革にクセづけを行います。
ここでポイントとなるのが、上記の方法は「グットイヤーだと行えない」という違いです。
グットイヤーの中底には、既に “リブテープ” というパーツ(中底を一周する布製の突起物)が接着されているので、チューブで巻き付けると、リブテープが寝てしまうからです。
※ 革製以外の中底を使用することもある為、そもそもクセがつかない事もあります。
故にハンドソーンの中底は、グットイヤーに対し、木型に沿った(湾曲した)立体的なソールへと昇華していきます。
靴を浮かして眺めた際、ハンドソーンに比べグットイヤーならば中底面がフラットに見えるはずです。当然ながら量産する上では、リブテープが重要な工夫でありメリットに変わります。
さて本題、チューブで形づけた中底革にウエルトを縫いつける為の溝を切り出して行きます。木型底面の凹凸を中底革にクセつけることで、足裏の凹凸と中底革が始めから近い形になることで、履き始めから足馴染みが良く、リブテープも無いため屈曲性に長けた特徴を持ちます。
【 工程その② 吊り込み 】
縫製されたアッパーを “ワニ” と言う専用の道具(写真 右手に持っているペンチのような道具)を使い、革を引っ張り、芯材を入れ木型に沿わせて成形して行きます。
この工程を機械で行う場合、つま先部、踵部、側面部(内外のふまず部)の3工程に分かれ、それぞれに適した機械で革を引っ張り成型するのですが、全ての箇所を均一的な力で一気に引っ張ることで、手作業に比べ、圧倒的に短時間で仕上がり且つ、木型を忠実にトレース出来るのでパリっとした印象に見えます。
しかし、Whenでは、あえてこの工程を時間がかかる手作業で行なっています。
一つの理由に、受注を受けてから製作しているので、誰が履く靴なのかが分かっている事です。
履く方の足をイメージして部分部分で引っ張る力の入れ具合を変え、数値には表せない微調整レベルのサイズ変更ができ、オーダー靴ならではの履き心地を目指し製作しております。
【 工程その③ すくい縫い 】
木型に吊り込まれたアッパーと中底にウエルト(靴を外周する革テープ)を縫いつける工程です。
“チャン” と呼ばれる 松脂と油を煮詰めた物を染み込ませた麻糸で縫う事で、強度と接着力を持たせ、糸切れや糸の緩みを防ぎます。
グットイヤー製法の場合は、正確には中底ではなく、リブテープ(中底に接着されている突起物)とウエルトを縫い付ける為、修理の際に縫い直すと布製のリブテープの耐久度が持たず擦り切れてしまいウエルトの交換が難しいと言われています。
一方で、ハンドソーンウェルテッド製法では、リブテープを使用せず中底革をあらかじめ加工し、縫うための穴を手作業にて一目一目開けながら直接ウエルトを縫い付けていきます。よって、修理の際に糸を解いて縫い直しても中底革へのダメージが少なく済み、数回はウエルト交換が可能になります。
【 ハンドソーンウェルテッド製法 “九分仕立て” まとめ 】
ハンドソーンウェルテッド製法とは、ウエルトを手縫いにてアッパー( 中底革 )に縫いつける製法。
九分仕立てとは、ウエルトと本底を縫いつけるダシ縫いと呼ばれる工程のみを機械で縫う事を言います。(それ以外の工程は手作業となります。)
機械を多用すれば、工数(時間)の短縮が可能になり、量産によるコストの圧縮を実現します。また機械生産が故に、均一な仕上がりもメリットなのかもしれません。
その一方で、手仕事が増えれば、工数(時間)も増加し、職人の技術や経験に仕上がりが依存し、生産数に応じ高価となります。
同じハンドソーンウェルテッド製の靴でも、大部分の工程を機械で代用している靴もある為、〇〇分仕立てと明記する事により、どの程度手作業で行なっているかを示唆することも重要だと感じております。
私個人としては手仕事で生み出される物に魅力を感じ、その道に進み現在に至るのですが、プロダクトは飾っておくためでなく、使って頂いてなんぼだと思っております。
よってコスト面も含め「品質と価格のバランス」を見極め、製造業の経験者として知見を活かしながら “ORDER SHOES When” の魅力をお伝えしていきたいと考えております。
全3回に渡ってお送りますが、最終回は「 底付作業と仕上げの工程 」をご紹介させて頂きます。
お楽しみにどうぞ!!