JOURNAL

2023.01.05Mail Magazine Archives  vol. 09

2022年11月19日 配信(一部抜粋)

『 オーナー中野のひとりごと 』

『 和服は直線・洋服は曲線 』こんな言葉をご存知でしょうか。

この言葉は、衣紋掛け(えもんかけ)を使うと、より深く理解することが出来ます。
二つ折、または鳥居の様な木枠で床の間に着物を飾る道具が衣紋掛け。これに着物を吊るすと非常に美しく鎮座します。

片やこれにスーツ(洋服)を掛ければご想像の通り。

人間の身体は曲線だからこそ、着物には着付けが不可欠であり、直線の着物を身体の曲線に置き換える行為が着付けとも言えます。またそのアプローチの数が、流派の数に繋がるのかもしれません。

私が小僧の頃、この言葉に “素数” のような美しさを感じ、この言葉から多くのことを学びました。
人間の身体は本当に人それぞれで、猫背や鳩胸・なで肩や怒り肩など、その分量含め曲線は様々な箇所に潜みます。

着心地とは重力の影響によって生じる現象でして、これを綺麗に受け止め、分散させるには、やはりその人の為だけに製図(型紙)をひくのが、私たちにとって一番の贅沢と言えます。

カッター(型紙をひく職人)は、製図の線を「 美しい・美しくない 」という言葉で評論します。これは、場数・経験がものを言う相対的な感覚で、論理的とファッション的な意図を兼ね備えた製図は、まるで絵画の様な美しさを帯び、そこに対象の人物が浮かび上がる感覚を得れます。

徒然と書き連ねてしまいましたが、私たち職業の面白さが少しでもお伝え出来れば幸甚です。

2022年11月19日 配信(一部抜粋)Mail Magazine vol. 09 より
『 オーナー中野のひとりごと 』