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2026.01.30頬ずりしたくなる服地。その名は SKYFALL

MTM – Factory cut
今回はご紹介する作品は、SUPER 180’s 繊維径 14.5マイクロンの原毛を使用した1着。
スーパー至上主義はあまり好きな考えではありませんが、生物が自然と向き合ったギフテッドだと言える逸品です。
さて通常 S180’s の原毛であれば、糸番手は100番を超える糸を使用した服地が業界通念。
本生地が “頬ずりしたくなる” 所以は、原毛のクヲリティもさることながら、糸の番手の太さと縦横の糸本数の量にあり、本日は業界の名品として現代でも燦然と輝く理由と魅力をお届けします。

地球上では、布は3種類に大別されていることを、皆様はご存じでしょうか。
① 織物: 縦糸を織機にセットし、シャトルで横糸を流しながら織り上げる布
② 編み物: 1本の糸を編み針でループ状に繋げて編み上げる布
③ 不織布: 繊維を織ったり編んだりせずに、熱・機械・化学的な処理で絡み合わせてシート状にした布
注文紳士服は、古来より ① 織物 を主な服地に使用しお仕立てしてきた業界です。
この織物に使用する縦と横の糸の太さ(細さ)が “糸番手” になります。
糸番手は、数値が低いほど太く、高くなれば細くなり、1グラムで1メーター紡ぐと1番手。1グラムで100メーター紡ぐと100番手となります。
よって、同じ100メーターの糸でも、重さが1グラムと100グラムでは、原毛の量が圧倒的に違い、コストにも大きく関わる計算となります。
更に糸番手の他に、縦糸と横糸の本数も生地物性に大きく影響します。
通常、ウールなどの毛織物の生地幅は150cm。
この150cm幅に4000本前後の縦糸の本数が一般的な服地です。
縦糸や横糸の本数が増えれば、原料コストの増加はもちろんの事、ゆっくり押し込みながら織り進める必要があるため、織り上げる難易度や時間コストも増加し、服地の価格に反映されることになります。
個人的には、ブランドのネームバリューではない尺度を知ることも、服地の面白さと感じて頂けると嬉しく思います。
さて本作の生地ブランドは DORAGO:ドラゴ。
S140’s 以上の原毛を扱う紡績企業としてはトップシェアを誇るイタリアを代表する紡績会社であり、その糸を自社で織り上げる一貫紡でもあるドラゴのコレクションから SKYFALL を採用しました。


【 SUITING 】
DORAGO(伊)
SKYFALL 14.5 MICRON
WOOL 100%
WORSTED SUPER 180’s
Weight 375 g / m
2025 – 26 AUTUMU & WINTER
Fabric Price ¥95,000 +tax
別途 お仕立て代
PRODUCT LINE
MTM – Factory cut(MTM – F)
おっ、と思って頂けた方がいれば非常に嬉しいのですが、上記のコンポーネントには2つの驚きがあると感じます。
一つは、S180’sの原毛を使用しながら梳毛(WORSTED)の糸で目付が375グラムの驚き。
コートなどに使用する紡毛は、短い繊維長の原毛を紡ぎ合わせる “短毛繊維” と呼び、梳毛とは原毛から切れ目のない糸を紡ぐ “長毛繊維”。
糸には、紡毛と梳毛の違いがあり、原毛を櫛(くし)で梳いた(すいた)際に、掻き出された短い繊維が紡毛とも言えます。
これは良い悪いの指標ではありませんが、カシミヤの繊維径が14〜16マイクロンですので、DORAGO・SKYFALL は、繊維径14.5マイクロンの細くしなやかな原毛から梳毛繊維を紡いでいることになります。
この貴重な繊維を使用するならば、当然ながらが糸番手は100番を超えるのが常識であり、服地の目付は300グラム前後になる筈です。しかし SKYFALL は目付375グラムなのです。
圧倒的な原毛の量。触った感触ですと糸番手は、おそらく80番辺りだと思われます。
その結果、紡毛カシミヤでは体感できない梳毛ならではの柔らかさと膨らみのある手持ち感、そして美しく贅沢なドレーピングを味わうことが出来ます。
これが魅力と名品たる理由の一つ。
最後2つ目は、この内容の原材料と生産コストにも関わらず、服地代がアンダー10万円であることです。
これこそ驚異的です。
原毛調達 → 紡績(糸にする)→ 染色 → 織布(生地を織る)→ 整理・検反・出荷までを自社工場内で一貫して行う “一貫紡” 企業ならではパフォーマンスだと感じます。
今回ご紹介のボディは、濃紺・ネイビー・チャコールグレー・ライトグレーの4色展開です。
またこのバンチ(生地見本帳)には、42種類の色柄と様々な目付の物性が収録される1冊。
これから4月新年度に向けて合服をご検討の方にもお勧め致します。


ブログを綴っていると、ついアカデミック寄りになってしまうのが私の悪い癖なのですが、、
ブランドのネームバリューではない側面から、服地の評価指標や生産背景を根拠にし、価格の判断基準を深掘りした次第です。
また如何に良い生地であったとしても、それに見合うお仕立てなのかも重要なポイントだと思います。
皆様の一助になれば幸いです。
引き続き、当店ブログをお楽しみ下さい。
